忍びよるマダニの恐怖。イヌやネコの命をうばうSFTSとは?
今回の記事はマダニの恐怖、特にSFTSについて解説する記事になります。
皆さんはダニについてどんなイメージを持っているでしょうか?
皮膚がかゆくなる?
アトピーの原因?
布団の中にいる?
もちろんそれらも間違いではないですが、もう少し深く見ていきましょう。
実は、とても恐ろしい病気が隠れているかもしれませんよ。
恐怖は突然に
ここで、マダニが関係している病気の例を一つ見てみましょう。
(こちらの話は実際の話を少し脚色したフィクションです。ただし、実際に起こる可能性は十分にある話です。)
Aさんの場合
Aさんは猫を飼っていて、その猫は毎日外へ遊びに行きます。
ある日、猫が外から帰ってくると元気がなく、ご飯も食べなくなってしまいました。
カゼかな。病院で診てもらおう。
病院で検査をしましたが、原因はわかりません。とりあえず点滴や注射のため入院となりました。
治療のかいなく、少しずつ猫は弱っていきました。
そして...3日後にその猫は亡くなってしまいました。
あれだけ元気だったの? いったいどうして?
Aさんは悲しみにくれました。悲しみで、食事も喉を通りませんでした。
猫が亡くなって1週間が経ちました。
いつまでもくよくよしていられない
少しずつ気持ちの整理をつけ始め、ショックから立ち直り始めていました。
しかし、Aさんの食欲は回復しませんでした。
それどころか頭痛、発熱が出始め、下痢や嘔吐まででるようになりました。
さすがにおかしいと思い、Aさんは病院を受診することにしました。
そして、Aさん自身も緊急入院することになったのです。
どうしてこうなった?
どうしてAさんも緊急入院することになったのでしょうか?
実は、この猫とAさんは、全く同じ病気に感染していたのでした。
その病気の正体は、
SFTS(重症血小板減少症候群) と呼ばれる病気です。
SFTSとは?
SFTSとはどういった病気なのでしょうか?詳しくみていきましょう。
SFTSって何?
SFTSは2009年に中国で発見され、日本では2013年に初めて確認されました。
SFTSはウイルスが原因の病気で、マダニがこのウイルスを運んできます。
この病気はマダニを介して、ヒト、ネコ、イヌ、シカなど、多様な哺乳類が感染します。
2019年までの感染動物と感染者のグラフです。
(出典:「SFTSの脅威と感染リスク、診断と予防、SFTSからスタッフを守るために必要な対策とは?」 EmVet主催特別セミナー 2019.08.20 横浜)
2019年に入り、人と猫の感染がどんどん増えていっています。
ネコに感染した場合
最初は元気がなくなったり、食欲の減退が分かりやすい症状です。
進行すると黄疸などがでてきて、急激に衰弱していきます。
ネコは特に危険で、
発症から、数日以内に重篤化し、亡くなってしまうこともあります。
猫の死亡率は非常に高く、約60%と言われています。
ヒトに感染した場合
ヒトに感染した場合は、かぜ様の症状(発熱、頭痛、吐き、下痢、筋肉痛)などから始まります。
進行すると、意識が朦朧としたり、免疫が落ちてしまうこともあります。
最悪の場合は亡くなってしまうケースもあります。
(出典: 山口県感染症情報センター ホームページ)
こちらは日本国内でのSFTSに感染した人と、亡くなってしまった人のグラフです。
ポイントとしては
- 主に西日本で発生
- 国内で多数亡くなっている
- 特に60〜80代での発症が多い
になります。
関東にいれば大丈夫?
現段階では西日本を中心に病気が広がっています。
しかし現状(2019年)、関東以東での、報告はありません。
では、関東より東にいる人たちは大丈夫なのでしょうか?
答えはNOです!
SFTSはシカやタヌキなど、野生動物に感染し、勢力が拡大傾向にあります。
関東の野生動物(シカ)の血液を調べると、
なんと37%がSFTS抗体が陽性
という結果が出てしまいました。
山口県では、50%を超えた辺りで最初の発症が確認されています。
つまり、関東でもいつ発生してもおかしくない状況なのです。
治療薬はあるの?
SFTSに治療薬はあるのでしょうか?
残念ながら、現段階で有効な治療法は見つかっていません。
点滴をしたり、隔離したりといった、対症療法しかできないのが現状です。
ただしSFTSに感染するには
マダニに噛まれるか、感染動物に接触しなければなりません。
つまりマダニの対策をすることで、感染する確率はぐっと減ります。
- SFTSはウイルスで、マダニを介して感染する。
- 多くの哺乳類が感染するが、特に猫と人で重症になりやすい
- 西日本を中心に発生しているが、関東でも出る可能性がある
- 有効な治療法は見つかっていない
SFTSの運び屋、マダニ
ここからは、マダニについてみていきましょう。
マダニとは?
マダニは、とても大きいダニで、大きいものだと、3cmくらいにもなります。
マダニは皮膚に寄生して、噛みついて血を吸います。
一度しっかり噛みついてしまうと、固定されてしまい何日も皮膚に居続けます。
ながいものだと2〜3週間居続けることもあります。
マダニに噛まれるとどうなる?
血液の中にはいろいろな病気が混入している可能性があります。
マダニは血液を食べ物にしているので、当然それらの病気をもらってくることがあります。
病気に感染したマダニが、別の動物の血を吸うと、その動物も感染してしまいます。
このように、マダニがどんどん病気を広げていってしまうのです。
- マダニは大きいダニで、一度噛まれるとしばらく皮膚に残る
- マダニはいろいろな動物を噛むことにより病気を広げる
SFTSを防ぐにはどうすれば良い?
では、SFTSを防ぐにはどうすればいいのでしょう?
感染経路から考えよう
SFTSに感染する経路は、
- マダニに噛まれる
- 感染動物に接触する
の二つになります。
つまり、人間や犬、猫がマダニとの接触を回避することが重要になります。
ヒトが噛まれない
ダニは、山間部や、草むらに生息する寄生虫です。
そこに進入する際は、長そでや長ズボンの着用が推奨されます。
ソデやスソを塞ぎ、マダニが服の中に入らないようにします。
虫よけスプレーも効果的です。
そして帰宅後はすぐにシャワーやお風呂に入りましょう。
万が一マダニに噛まれていたら、すぐに病院に行きましょう。
犬・猫が噛まれない
犬・猫を守るには、予防薬を投与するのが、最も有効です。
月に1回、予防薬の投与を推奨します。
今は予防薬も多様ですので、どれにするかは近くの動物病院で相談してみるといいでしょう。
ちなみにドラックストアで売っているものは、効果が弱いことが多く、推奨されません。
- SFTSはマダニ予防をすることで防げる可能性がある
- 人は長そで、長ズボンを履き、帰宅後はすぐにシャワーを浴びる
- 人がマダニに寄生されたらすぐに病院へ
- 犬や猫の予防は、きちんと予防薬を投与すること
まとめ
いかがだったでしょうか?感染症は普段見逃しがちですが、一度広がってしまうと中々止まらない怖い病気です。
つまり、病気を予防することがとても重要になります。
ぜひ、マダニも予防できる予防薬をしっかり投与するようにしましょう!
最後に、今回の記事のまとめを載せます。
- SFTSは感染すると亡くなる可能性がある怖い病気(特に猫と人)
- マダニが運び屋になるので、マダニ対策が重要
- 現段階で有効な治療法はないので、予防が重要
- 人は山に行くときは長そで長ズボンを履き、マダニに触れないようにする
- 犬や猫は毎月予防薬を投与する