犬が震えて下痢をする。実例を見ながら解説

犬が震えて下痢をする。実例を見ながら解説

犬 下痢 震え

 

 

はじめに

犬が下痢をして震えている。非常によく見る症状です。
ただ、震えというだけでは原因の絞り込みは難しいです。

この記事では、僕ら獣医師は下痢で震えている犬の原因をどうやって突き止めているかを紹介していこうと思います。

(ここで紹介している症例は、実際に僕が経験した症例に少しアレンジを加えたものです)

 

症例の紹介

犬 下痢 震え

 

来院されたのは13歳のチワワ。
1年ほど前から下痢が続いてましたが、元気はあったので様子をみていた とのことです。

 

最初に異変を感じたのは3日前。徐々に元気や食欲がなくなっていきました。
そろそろ病院に行こうと思っていた矢先に、急に犬が震えだしました。

 

明らかにおかしいと感じ、急遽、夜間救急を受診されました。

 

何が考えられる?

さて、犬が震えていたら皆さんはどう考えますか?

 

怖いからかな? 寒いからかな? もしかして脳の病気?

 

イロイロ考えてしまいますよね。

 

では、獣医師はどのように考えるのでしょう?

 

僕らはまず、症状から考えられる可能性を全て挙げ、その可能性を検査で一つずつ除外していく、といった方式をとっていきます。(専門用語で除外診断といいます)

 

さて、下痢をして震えているのであれば可能性としてこんなものが挙げられます。

 

  1. お腹が痛い
  2. 低血糖
  3. イオンバランスの乱れ
  4. 脳、神経の問題

 

さて、この中に答えがあります。これから一つずつ探っていきましょう。

 

お腹が痛い

犬 下痢 震え

 

お腹が痛い原因は、どんな可能性があるのでしょう?

 

最も注意しなければならない病気の一つは、『ひろいぐい』です。

例えばおもちゃなどを誤って食べてしまった場合、それが腸に詰まってしまうことがあります。その結果、詰まった部分に血液が行きにくくなり、徐々に壊死をしてしまいます。
当然痛いに決まっています。

 

異物があるかを確認する最も有効な検査。
それは レントゲン と エコー検査になります。
早速実施しました。

 

その結果、明らかな異物は確認されませんでした。

 

しかし、エコー上で腸の粘膜が少し荒れている様子が確認されました。

腸の粘膜が少し荒れている。もしかして胃腸炎か?

 

たしかに急性の胃腸炎でも腹痛が見られることがあります。
そして、急性の胃腸炎であれば、点滴等によって改善する可能性があります。

 

ここで検査を切り上げて、点滴で様子を見てみようか。。。

 

しかし、急性の胃腸炎にしては違和感があります。
この子は、1年前から慢性的な下痢をしています。

 

対して急性の胃腸炎はあくまで一過性のものです。1年続くことはあり得ません。
やはり追加の検査が必要です。

 

腹痛は、胃腸炎や異物以外の原因はないのでしょうか?
もちろんあります。それは、内臓系の病気です。

 

内臓の病気で下痢を引き起こしうるもの。
イロイロありますが、代表的なものに肝臓、腎臓、膵臓などがあります。
これらを血液検査で確認してみましょう。

 

その結果は。。。

 

肝臓、腎臓、膵臓の数値は問題ありませんでした。
念のため超音波でも確認しましたが、目立った異常は見当たりません。

 

本格的に胃腸炎か?
しかし、決めつけはいけません。まだ除外していない病気がたくさんあります。
それを見てから判断しても遅くはありません。

 

低血糖とイオンバランスの乱れ

犬 下痢 震え
さっきの血液検査で使用した血液はまだ残っています。
血糖値やイオンバランスを確認するには十分な量です。

 

幸い院内での様子やオーナーの話を聞く限り、神経の問題ではなさそうです。これだけ調べて終わりにしましょう。

 

血液検査の結果がでました。

 

犬 下痢 震え

 

ひとつ、異様な数値が出ています。

 

カルシウムが異常に低い数値をとっています。

これは危険です。すぐにカルシウムを補正しないと、命に係わる可能性があります。

 

すぐに点滴からカルシウムを流して、カルシウムを補充しましょう。

 

 

いよいよ診断へ

犬 下痢 震え

 

カルシウムを流して、震えは改善しました。いままでの検査所見から、カルシウムの低下や慢性的な下痢は、腸の病気が関連している可能性があることがわかりました。
これ以上はより積極的な検査が必要です。

 

体調が落ち着いた後に、麻酔をかけて内視鏡(胃カメラ)を実施しました。

 

最終診断

慢性腸症による低カルシウム血症

 

 

病気の解説

慢性腸症

 

慢性腸症とは、何らかの原因によって、腸に慢性的な炎症が持続してしまう病気です。

  1. 食事によるもの
  2. 腸内細菌の乱れ
  3. 免疫疾患

などが代表例ですが、ここから先は治療反応をみる必要があります。

 

慢性腸症は持続的な下痢、がメインの症状です。下痢が続くことによって、体に大切なイオンが流れて行ってしますことがあります。今回はカルシウムが流れてしまったわけです。

 

体の中のカルシムが少ないと、震えといった症状が出てくることがあります。

 

その後

犬 下痢 震え
その後、いくつかの治療を試しましたが、最終的には食事の変更と、薬をいくつか飲むことによって改善傾向にあります。慢性腸症は良好にコントロールできれば、通常の生活に戻れる可能性が十分ある病気です。

 

しかし、もしあの時点滴だけで済ませてしまっていたら。最悪の結果になっていたかもしれません。
このように、検査を省略することで、命に係わる可能性が出てきます。

 

検査費用は決して安くないですが、安易な検査の省略は命取りになる可能性をしっておいてください。

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